演習: 三項間漸化式とベルヌーイランダムウォーク
ランダムウォークに関する以前の記事(https://math-quest.jp/feature/911b6c6d-6a8c-ef0d-a7a4-aaa9c1f0bb40/)で、ランダムウォークの再帰性について確かめるにあたり \[\sum_{n = 0}^{\infty}t^{\frac{1}{2}}P_n(0, 0)\] の値を求めるということをしました。今回は、よく似た \[\sum_{n = 0}^{\infty}P_n(0, x)\] の解釈とその値について、演習を通じて触れてみましょう。式変形自体は大学入試の問題でも出てきますから、数学や応用数学分野を志す高校生の方も挑戦してみてください。
\(P_n(0, x)\)は、原点を出発したランダムウォークが\(n\)ステップ目に\(x\)に到達する確率を表します。ある事象の確率は、それが起こる回数の期待値とも解釈できますから、\(P_n(0, x)\)は、原点を出発したランダムウォークが\(n\)ステップ目に\(x\)に到達するという事象が起こる回数の期待値と考えられます。\(n\)に関して和をとることで、ランダムウォークする動点が全時刻を通じて点\(x\)に到達する回数の期待値(\(x = 0\)の場合はおまけで\(+1\)を加える)を求めることができます。
\(p = 3/4, q = 1/4\)のベルヌーイランダムウォークに関して、 \[\begin{align*}
P_{n + 1}(0, x) &= \sum_{y \in {\mathbb{Z}}}P(0, y)P_n(y, x)\\
= P(0, 1)P_n(1, x) + P(0, -1)P_n(-1, x)\\
&= \frac{3}{4}P_n(0, x – 1) + \frac{1}{4}P_n(0, x + 1)
\end{align*}\] が、\(0\)以上の整数について成り立つことから、 \[\sum_{n = 0}^{\infty} P_n(0, x) – \delta(0, x) = \frac{3}{4}\sum_{n = 0}^{\infty} P_n(0, x – 1) + \frac{1}{4}\sum_{n = 0}^{\infty} P_n(0, x + 1)\] が成り立ちます。つまり、ランダムウォークの到達(arrival)回数の期待値に関して、 \[a_x – \delta(0, x) = \frac{3}{4}a_{x – 1} + \frac{1}{4}a_{x + 1}\] という漸化式を作ることができました。
1 問1
\(a_{x + 1} – a_x\)を\(a_x, a_{x – 1}, \delta(0, x)\)を用いて表せ。
前回の記事によって、\(a_0 = 2\)であることはわかっています。あとは\(a_1\)および\(a_{-1}\)の値が分かれば、問1の結果によってすべての整数\(x\)に対して\(a_x\)の値がわかることになります。まずは\(x\)が正の場合について考えてみましょう。
2 問2-1
\(x\)を正の整数として、\(a_x – a_{x – 1}\)を\(x, a_1, a_0\)を用いて表せ。
3 問2-2
すべての正の整数\(x\)に対して\(a_x \le 2\)となるように\(a_x\)の一般項を求めよ。
前回の記事から\(a_0\)の、また問2-2から\(a_1\)の値がわかりましたから、あとは問1の結果を用いることで、負の整数\(x\)に対しても\(a_x\)の値を求めることができます。
4 問3-1
問1で求めた式に\(x = 0\)を代入することにより、\(a_{-1}\)を求めよ。
5 問3-2
すべての負の整数\(x\)に対して\(a_x\)の値を求めよ。